創業100年、四代続く街の靴屋
はじまりは下駄屋さん
大正10年の創業当時は、草履、ゲタ等の販売をしていました。「タグチの下駄は鼻緒がゆるまない」と評判で、ご贔屓にしてくださった地域の方々がたくさんいました。
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店頭にはたくさんの下駄や草履が並び、修理に訪れる人もいました。鼻緒の調整をして再び履きやすくしてさしあげたり、アフターメンテナンスを大切にする姿勢は、実は創業当時から続いていたのです。
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写真に写るのは二代目と、まだ幼い三代目(現会長)です。大正、昭和、平成、令和と、四代続いてこられたのも、支えてくださった地域のみなさまのお陰です。下駄や草履だけではなく、靴の販売も手掛けるようになりました。
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写真は1996年(平成8年)の店頭の様子です。時代の流れとともに大型店の進出等もあり、ただ靴を売るだけでは厳しくなってきたので、 靴の修理や、歩く事(靴)と健康、身体に及ぼす影響等を医学的観点からも勉強し、その知識を活かしてオーダーメイドで中敷や靴を作り、 お客様一人一人の足に合わせて靴を売る、「シューフィッターのいるお店」として商売の軌道修正をし、今に至っております。
※シューフィッターとは、足に関する基礎知識と靴合わせの技能を習得し、 足の疾病予防の観点から正しく合った靴を販売するシューフィッティングの専門家のことです。
靴のお医者さんとして
大量生産の時代に作られた靴は、決まった型の靴を量産し「靴に足を合わせる」という消費スタイルになっていました。靴文化がヨーロッパのように根付いていなかった日本では「足に合わせて靴をつくる」という意識がまだまだ薄く、一部の愛好家が楽しむものとされてきました。本来、歩くことが健康に与える影響はとても大きく、歯の噛み合わせが足と密接に関係しているくらい、重要なことなのです。今の日本では、腰痛やひざ痛など関節の痛みや扁平足、外反母趾など様々な足や靴のトラブルにお悩みの方が増えています。その原因のひとつが、足に合わない靴を無理に履き続けてしまうことにあるのです。
創業100年を向かえた2021年は、新型コロナウイルスが猛威をふるう、誰も想像もしなかった時代となりました。ステイホームで自粛生活が続き、外出しない、つまりは靴を履かない日々が長く続いたのです。お客様と直接お会いしてカウンセリングやフィッティングを行っていた当店にとって、お客様とお会いすることもままならない毎日は本当に悲しいものがありました。しかし、そんな中でも「お出かけできるようになったら履きたいから今のうちに修理に出したい」「運動不足が気になってウォーキングを始めたから、足に合うシューズを相談したい」というご相談をいただきました。足にぴったり合う靴を履いて、元気に外を歩く日々が、生きる励みにもなっていると知り、靴屋として心から感謝の気持ちでいっぱいになりました。
さらに、SNSなどを通して若い世代の方々からのお問い合わせも増え、子育て世代のお客様からお子さんの靴の相談をいただいたり、オンラインによるカウンセリングなど新しいお客様とのコミュニケーションのカタチも生まれました。